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『史上「最も売れた少女漫画」らしいです。』
単行本累計「6千万部突破」の史上最も売れた少女漫画だ。
で・・・内容はというとナルホド確かに面白い。
学園を牛耳るお金持ちのボンボン息子・4人組に目を付けられた庶民の女の子(主人公)はイジメに立ち向かう・・・・はずだったのだが、何と当初の敵のはずの4人組のリーダーが主人公を好きになってしまったことから事態はややこしいことになっていく。
価値観も金銭感覚もまるで違う2人が恋をするのだから全てにおいてトラブル続き。
オマケにお互いに恋愛経験はなく、全てが手探り状態の中での意地の張り合いにも「似た者同士感」が表れ、いちいち事情を複雑化させていく。
ジェットコースター的な展開が絶妙。
魅力は何と言っても、道明寺がつくしを好きになっていく中で「乱暴でワガママなお坊ちゃん」から脱皮して「人を愛することの出来る優しい男」になっていくという点だと思う。
自分が生まれ育った環境に胡坐を掻き、「金が全て」という価値観しかなかった男が、恋を知り愛を体験する過程で「つくし以外の他人さえも」思い遣れるような優しさを身に付けていくのだ。
道明寺をそういう男に生まれ変わらせたつくしの魅力も絶大で、正に「イイ女は男をも変える」という証明か。
そして終盤ではつくし自身も大人になった道明寺に影響を受けて大きく成長する相乗効果。
「恋も愛も知らなかった少女」もサナギから脱皮して美しい羽を広げることとなった。
マーガレット連載作品でここまでの巻数が続いた作品はザラに無い。
というか連載中はおそらくはこの作品だけが飛び抜けて面白かったというのが正直なところではないか?
画も初期は描き慣れていない印象だが、中盤以降は安定し、男性が見ても見やすいクセの抜けた綺麗な絵になった。
ストーリーはつくしと道明寺の明るい未来を予感させて終わるが、どうやら続編がありそう。
引っ張り過ぎ・・と思いつつも、完全決着の見たくなる作品。
「美作」の存在感の薄さは気になるが・・・・。
確かに「美作」はF4の中で1人だけこれといった出番がなかったです。
しかし・・・それも考えてみたら当然かも。他の3人は「家庭環境」にそれぞれ問題がある(「家族と不仲」)ため、精神的に自身を確立する上で根本的な部分で満たされていない。それゆえ、その満たされない不満が屈折した形で「暴力」や「放蕩」や「無関心」という形に姿を変えて発散されていた。
その3人に対して美作は4人の中で1人だけ家族仲が悪くない。
むしろ仲が良すぎて、美作は逆に家族が苦手になるほどだった。しかし、彼の生来の気質(頼られるとついつい世話を焼いてしまうとか、周囲に気を使うとか、他人を立てるとか)があるため、面と向かって拒絶することも出来ない・・・っていう意味では、本人も葛藤を抱えていて、それをつくしに「不本意だけどね」と語っている。
兄弟構成という点で見ても、彼は4人の中でただ1人「長男で、お兄ちゃん」だった。
司は長男だが弟。総二郎は三兄弟の真ん中で次男。類も長男だが、1人っ子なので下の面倒を見るという経験を積んでいない。
兄弟構成を見ても彼が面倒見が良くなった理由が示唆されている。
ただ、F4の中で1番地味と言っても、それは「あくまでもF4の中で」の話。
上記の理由から基本的に「唯我独尊」の性格となってしまった他の3人は、F4以外のグループに属することが出来ない。(最初は周囲からチヤホヤされたとしても、やがて他人が付いていけなくなって最後には孤立してしまう。)
それに対して、美作は別にF4でなくても集団に馴染み、周囲の人間と上手く付き合っていけるはずだ。
・・・・というか、「F4以外のグループ」だったら彼がリーダーになっていることだろう。
本人もそれは理解しているはずである。
それを分かっていながら、敢て「最も地味な立ち位置についている」ところが彼の優しさであり、良さなんだろう。
傍から見たら、騒がれ憧れられる「F4」も彼がいなくては集団として成り立つことすら難しい。
悪く言えば「自分勝手」な他の3人の間を上手く調整しているのは常に美作だった。
他の集団に属せばリーダーになれるのに、敢て「F4で最も地味な役柄をこなす」のは他の3人の孤独を知っていたからに相違ない。それは、つくしも理解していた。
結局、最後の最後まで「主役」としてスポットライトを浴びることはなかった彼だけれど(申し訳程度に「番外編」が語られたが・・・)、裏方に回って他の3人を立て続けた姿勢は「彼の人間性」を象徴していると思う。
そして美作自身も今はそんな自身の生き方に葛藤を抱えてはいるものの、いつかそれを「自分の生き方」として納得できるんじゃないかなとも思う。
誰に自慢するわけでもないけれど、それってカッコイイことじゃないだろうか?